FIRST |
「大瀧詠一(通称ファースト)」にならって、 「ファースト(通称明智小五郎)」とした(以下、「FIRST」)。 ジャケットは、当時話題になっていた百武彗星。 月の地紋は、近所の大学の梅の花をエンボス加工で。 ウサギがわりの、おなじみスーパーのび太が咥えているのは、 渡辺満里奈の生足。 千社札は、NiftyServe時代の友達の父君(確か歯科技工士)が 作ってくれた。 そのころまでに録音していたもののうち、作品としてマシなものを、 必要であれば再録・ダビングして発表したのが本作。 「この時点でのベスト」というよりは「これ以外にたいしたものはない」。 その後、次々にアイデアが生まれて作品を作り続けるかと思いきや、 何かきっかけ、締め切りが無いと動かない自分を再発見。 「言いたいことが次々と溢れ出る」という、 いわゆる「クリエイター」的な性格ではないことを実感する。 話のタネとしても、こうして形として残っているのは面白い。 ある意味最初で最後の作品集の、ナイアガラ的に言えば10周忌の法事。 学生時代から続けている「録音遊び」の一里塚である。 その後、散発的に録音・発表したものも、 この「FIRST」からのベクトルで考えたことが多い。 ケツを叩いて本作を形にしてくれた、 エグゼクティブプロデューサーの御大・伊能四郎氏には頭が上がらない。 ケツは上がる。叩かれやすいように。 ちなみに「青田留美」の詞は、具体的な女性をイメージして書かれている。 アナログテープに録音された音は、今聞きなおすと新鮮。心地よい。 デジタル録音には無い丸みと奥行きが、そこにある。 初回発表時の、ナリアガリ製作カセットテープは秀逸。 アナログテープ特有のEQ、リミッターがうまく聞いている。 “カセットテープの魔術師”御大・伊能四郎氏の傑作。 興味があればぜひ、聞いてもらいたい一品。 |
慰望 |
「大瀧詠一(通称ファースト)」の1曲目が「おもい」だったので「いもお」。 そこから当て字をして、その当て字からイメージを膨らませて歌詞ができる。 せっかくなので頭韻も踏んでみる。 「パンパンパン」というコーラスは、当時のヒロヲケンさんが多用していたフレーズ。 「おもい」は、「アカペラでやろうとしたけれどアドバイスで薄くギターを入れた」 との解説があったので、逆にアカペラでやってみた。 ギター入り版はボーナストラックに収録。 |
素敵じゃない(It would not be nice.) |
8tr、シーケンサーを買って最初の録音。 Aメロはフリッパーズの「世界塔よ永遠に」。 タイトルとBメロはビーチボーイズ「素敵じゃないか」。 ブリッジはビーチボーイズ「Our Sweet Love」。 エンディングギターは松田聖子「冬の妖精」。 オリジナル版は音程があやふやなので歌いなおしたが、 結果的にあやふやのままである。 ギターダビングの時、リズムギターからリードギターに変えるのを、 リアルタイムでエフェクターを踏んで音を変える。 ライブ感を出したつもりだが、今思えば、 ギタリストとしては「やって当然」のこと。 それでも「ひとりでできたー」(ジーコ)と喜んでいた。 |
夜明けの旋律 |
全体のイメージは小沢健二「カウボーイ疾走」。 イントロはBuffalo Springfield「On the way home」。 シンプルなサウンドを念頭にした。 後半の一部でギターのボリュームを切った。 音を削る楽しさを感じた曲。 ドラムレスでじゃんじゃか兄弟でライブ(1994年)。 リードギターとベースのアレンジは2人におまかせ。 才能のある人に任せた、ぶっつけ本番の緊張感は楽しい。 むさしのFMでも、ぶっつけ本番の生放送がたのしかった。 実はライブが好きなのかもしれない。 というより、録音は何度でもやりなおせる為、 その無間地獄が怖いという理由が大きい。 ライブは過ぎてしまえば、笑って許すしかない。 |
白い妖精 |
1994年の納涼放談の為に書き下ろした金銀作品。 チャカポコしたサウンドを目指す。 モチーフは大滝詠一「FUN×4」。 オリジナルテイクでは歌いだしの前に呼吸音が大きく入っていたが、 納涼放談放送の際に綺麗にカットしていただいた。 すっきりして心地良いので、今回はオリジナルマスターからカット。 呼吸音は次回の記念盤にて。 これも歌いなおして「FIRST」に収録。コーラスを多めに。ややゴージャスに。 Voはオリジナルのほうが勢いがあり、音の輪郭がはっきりしているようにも思える。 MIX時、エンディング近くのリードギターのリフが出現する8小節の位置を オリジナルと入れ替える。これはオリジナルのほうが正解。 |
白黒野郎 |
学生時代からの盟友Soltyくんとの共作。原題は「僕はモノクローム」。 Soltyくんと当時ハマっていた「The Collectors」の 「僕はコレクター」に掛かっている。 さらに「君は天然色」のタイトルアンサーソングだと聞かされたのは数年後。 その後、説明もなしに「天然色」のアンサーソングだと気づいてくれたのは 恐らくさつきゆめこさん、ただ一人。 オリジナルバージョンは4tr録音で、生弾きベース。 同じくSoltyくんとハマっていたPINKの影響で、 チョッパーベースの音を試していた時期。 同時期にチョッパーを用いた習作としては 「ジングル・ベル」「君は・クリスマス・ローション」などがある。 曲調は当時考えた「モータウンとは」サウンド。 今思えばH=D=Hリズム。典型的な誤解。 歌詞は歌いやすく変えてしまったのでSoltyくんには不評だった。 そのため、「FIRST」録音時にオリジナルに忠実に戻す。 同じくSoltyくん作品で「月面より愛を込めて」というのがあり、 これはそのうちどこかで発表される予定(もちろん未定)。 |
2つのグラス |
「作曲:明智小五郎」。 金銀銅次氏の「編詞」に答える為、編曲者の登場であった。 10年目にしてクレジット修正。 いわゆる「黄昏時を飾る街」問題の解決である。 金銀銅次氏との最初の共作。 オリジナル録音時、4TRのMTRが「突然電源が落ちる」症状が多発。 録音ヘッドに過大電流が流れたためか、イントロで「謎の爆発音」が鳴る。 モチーフは大滝詠一「ペパーミント・ブルー」。 習作ではないオリジナル曲を録音したのは3曲目くらい。 4trで詰め込めるだけ詰め込んだつもり。 録音には、学校からこっそり持ち帰ってきた(大嶋先生ごめん)SONYのマイクを使用。 天井からつるして、手ブラでマイクに向かう。 (ブラを外して、手で乳首を隠す、の意味ではない) 立って声を出すことで、少しでもはっきり歌おうとしたのと、 格好だけ「レコーディングスタジオ」感を味わってみたかったのがその理由。 このマイクが蛍光灯のノイズを拾うため、暗闇の中でマイクをつるして コーラス(あーうー)を録音。 「部屋から妙な声がする」と心配して様子を見に来た母親は、 「息子は気が狂った」と確信したらしい。 「FIRST」再録時は、エンディングの「白い港」感を少しだけ強調。コーラスも厚めに。 途中のストリングスフレーズにSPANKY&OUR GANGの「Like to get to know you」風なものを。 ストリングスのピチカートは、御大その2・杉江和八さんのアレンジを参考にさせて頂いた。 納涼放談で発表したものは、Vo違いで別MIX(びしょびしょMIX)。 そこからさらに歌いなおし、MIXをやりなおしたものを「FIRST」に収録。 初期バージョンに比べれば幾分マシになったものの、 結局、自分のイメージの音程をとれていない。 |
夏のリゾート |
柳田兄妹作品。送られてきた歌詞の中で最も風景画っぽいものを選択。 伊能氏から「色の単語が多いのが特徴的」との指摘。 モチーフはあからさまに「カナリア諸島にて」。 オリジナル録音時の「ファミコンの音っぽい」との意見を聞き、 「FIRST」用録音ではコーラス多用、エコー多用。人間臭さを追加してみる。 さらに伊能氏のアイデアで波音をざばざば。「多羅尾2」や「カレンダー」風に。 |
Naughty Girl |
当時「HIPHOP的な音」と思っていた曲調へのアプローチ。 同じリズムパターンを延々と繰り返す作品を製作。 サンプルとして頭に置いたのは、フリッパーズの「バスルームで髪を切る100の方法」。 この曲のインストバージョンを、当時担当していたイベントの最中に BGMとして(勝手に)流す。 |
狭いお山をブッ飛ばセ(Instrumental) |
原題「それ行けドンキー」。 当時の同僚が次々に車を所有しはじめ、 その車でよく「びっくりドンキー」に行っていた。 ドライブなのでホッドロッド風。 ベンチャーズのホッドロッドサウンドの曲で 「青い渚をぶっ飛ばせ」というのがあったので、 埼玉県狭山市バージョンとして改題した。 全体のイメージはフリッパーズ「ビートでGOGO」「ナイフエッジカレス」。 途中の一部で浜田省吾「思い出のファイヤーストーム」。 フリッパーズの「ビートでGOGO」では「テケテケ」ギターが鳴っていた。 これがフリッパーズを聞くきっかけになる。 本来は歌つきを考えており、考えていた歌い出しは「ツトムはカローラ買ったのサ♪」。 同僚のツトムくんがカローラレビンを買った為。 二番の頭は「スギヤマソアラをやめたのサ♪」だった気がする。 間奏前は「そーれーいーけーど〜んきー♪」で、 狭山びっくりドンキー愛好会の面々に「ドンキー!」と 叫んでもらうことを想定していた。 なお、この曲に金銀銅次氏が詞をつけてくれて、 御大・伊能四郎氏が歌ったというデモバージョンがある。 当時、何かの機会で失恋話をしていて、 そのイメージも織り込んで頂いたと記憶している。 伊能氏のノってるボーカルが冴える名曲なので、公式発表が待たれるところ。 特に「う〜〜」というシャウトが気に入っている。 後日、ご本人に伝えたところ、ビートルズのシャウトを意識したとのこと。 しかし今では確実に「伊能シャウト」と分類できる歌唱法であろう。 |
寒いお別れ |
タイトルはレイモンド・チャンドラーの「長いお別れ」より。 基本モチーフは平野愛子「港の見える丘」。 歌い出しは無意識にバートバカラックの 「I'll never falling love again 」になっていた。 わが心の「和風」をイメージした曲で、 甚平を着たり下駄を履いたりする今の趣味の原型。 インスト版をむさしのFMのオープニングトークで使用。 |
僕の中の微笑み |
伊能氏と初対面を果たした1993年の年末放談に、 同年の納涼放談に間に合わなかった作品として提出。 当時としては、まだ珍しいモノだったCD-Rに録音して持参。 曲調は渡辺満里奈「大好きなシャツ」。 この曲や「白い妖精」のオリジナル版などは、 今ほど考えずに勢いで作っていた。 それは雑な反面、勢いのある録音。 これもじゃんじゃかライブ(1995年)で再演。 歌詞を間違える。金銀さん申し訳ない。 これもアレンジを2人に任せる。 じゃんじゃか的な解釈の「おしゃれ感」が心地よい。 このライブ以降、じゃんじゃか兄弟は活動を停止している。 最後の最後で油の乗った演奏をしており、 割れんばかりの拍手喝采を浴びてステージを降りる。 |
冬の世界 |
前出Soltyくんに続いて、学生時代の友達、上村くんとの共作。 村下孝蔵ファンならではのせつなさが表現されている。 この3人で「Super Triangle」というユニットを結成し、 デビューシングルは「B面で変をして」の予定だった。 しかし、スケジュールが合わずに断念。 後に上村くんのかわりに女性ボーカルを呼んできて録音したのが 「Cider'98」と「Cider'99」。 それゆえクレジットは「Super Triangle Vol.2」 オリジナル版は当時、奥居香のラジオでオンエアされる。 間奏に入る瞬間の音は、オリジナル版のほうが心地よい。 |
Cider'93 |
当初「Cider'90」として発表されていた金銀氏の作品に 1993年に曲をつけて発表(経緯は「ちゅももん通信」に詳しい)。 HyperCard(Mac付属ソフト)に音を貼り付け、 先ごろサービスを終了したNiftyServe内で発表した。 曲調は「Cider'83」。 「この曲調を量産すべき」とのアドバイスを受けるが、 1度やると飽きるので、やらなかった。 大瀧詠一(通称ファースト)の最後の曲はカセット再生音で、 テープ停止音(ガチャン!)で終る。 それにならい、「FIRST」では 自宅オーディオ機器でCD-Rを再生。それをAIWAのマイクで録音。 イジェクトボタンを押して排出され、電源を切る音で終る。 このマイクが伊能氏に人気で、年末放談等で何度か登場。 |